経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
電子出版物配信事業者は、電子出版物を購入した利用者から電子出版物の再配信を求められた場合、これに応ずる義務はあるか。
また、端末のOSがバージョンアップした場合に、配信事業者は閲覧アプリをアップデートする義務はあるか。
さらに、配信事業者が配信事業を廃止した場合や、配信権限を失った場合に、配信事業
者が再配信を中止することは利用者に対する債務不履行となるか。
再配信を行う義務の有無及び範囲について利用規約に規定があり、これが配信事業者と利用者との間の契約内容とされている場合にはこれによります。
利用規約に規定がない場合には、諸般の事情から、利用規約の合理的意思解釈や、利用者と配信事業者の黙示の合意の有無・内容を判断する必要があり、配信事業者が利用者に対し電子出版物の再配信を行うことを約したと判断される場合には、利用者に対し、約したと判断される範囲において再配信を行う契約上の義務を負うことになります。
配信事業者に電子出版物がバージョンアップされたOSにおいて利用できるよう対応する義務が存するかどうかについては、利用規約に定められており、利用者と配信事業者との間の契約内容とされている場合には、その契約内容によります。
利用規約において規定がない場合には、利用規約の合理的意思解釈や、利用者と配信事業者の黙示の合意により、配信事業者がバージョンアップされたOSにおいて利用できるよう対応する契約上の義務を負うかどうかは、当該配信事業者による電子出版物配信サービスの内容、配信事業者による配信サービスの説明の状況、配信された電子出版物の販売価格、アップデートされたOSにおける電子出版物の利用についての一般利用者の認識等諸般の事情を考慮して検討されます。
配信事業者が事業終了後に再配信は行わないことが利用規約に規定され、これが利用者と配信事業者との間の契約内容とされている場合には、配信事業者は事業終了後に再配信を行うべき義務は負わず、配信事業者が再配信を行わなくても利用者に対して債務不履行責任は負いません。
これに対し、配信事業者が配信事業を廃止した後は再配信を行わないことが利用規約に規定されていない場合には、配信事業の廃止の原因や、配信事業の廃止に至る経緯、利用者と配信業者の合理的意思や黙示の合意等の諸般の事情を考慮して、事業者が再配信を行わないことが債務不履行となるかどうかを検討する必要があります。
著作権法の一部を改正する法律(平成26 年法律第35 号)の施行に伴い、電子出版物に対応した出版権の整備が行われたことを踏まえ、平成27年4月の準則改訂により、以下を追記。
※配信事業者の電子出版物の配信権限は、作家等著作権者から権限を与えられた出版社から、電子書籍取次事業者を介して与えられることが多い。
よって、以下の場合において配信事業者の配信権限は失効する。
・配信事業者と電子書籍取次事業者の契約が期間満了や解除等で終了した場合
・出版社や電子書籍取次事業者が権限を失った場合
※従来、出版者は著作権者から許諾を受けて電子出版物の公衆送信を行っていたが、平成26年の著作権法改正(平成26年法律第35号。平成27年1月1日施行。)により、出版者は著作権者から電子出版物の公衆送信について出版権の設定を受けられるようになった(法第79条第1項)。
出版権の設定を受けた出版者は、著作権者の承諾を得て、配信事業者に対して電子出版物の公衆送信を許諾することができる(同第80条第3項)。