契約書の遠山行政書士事務所

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民法改正(2020年4月施行)とサイト制作・ウェブサービス契約書のポイント

 民法(債権法)の改正が2020年4月1日より施行され、同日以降に締結された契約には改正事項が適用されます。
 ウェブサイト制作や各種ウェブサービスの提供をする事業者様の契約について影響がある改正点について概要を記述します。

 この民法改正では、従来の民法では(法律関係者視点からは)当然とされて省略されていた事項を条文に反映すること、積み上げられた債権法に関する判例を条文に反映すること、現在の商取引に合わせた修正を行うことが実現しています。
そのため従来からの民法解釈を踏襲することを基本としつつも、大きく修正がされるところもあります。

そうした改正事項のポイントを以下に挙げていきます。

 

民法(債権法)改正のポイント
 ・請負契約に可分報酬請求権の導入【562条】
 ・準委任契約でも成果物の納品を前提とすることも可に【648条の2】
 ・錯誤無効から取消制度への変更【95条2項】
 ・債務不履行と契約不適合責任(瑕疵担保責任の廃止)【540条~543条,562条~563条】
 ・危険負担の債権者主義の廃止【改正前534条の削除】
 ・意思表示を到達主義に統一【改正前526条の削除】
 ・消滅時効の短期化【166条~167条】
 ・法定利率の引き下げ【404条】
 ・定型約款の規定新設【第548条】

 

これらの改正ポイントについてIT関連業務の契約書に反映させていく観点から解説します。

請負契約に可分報酬請求権の導入【562条】

 ウェブサイト制作やシステム開発では発注者と制作者の間で請負契約を交わすケースが多いですが、この請負契約では仕事を完成させて成果物を引き渡す(納品する)ことで報酬を請求するのが原則でした。

 これを厳格に適用すると仕事の99%が完了しているのに、残りの1%が未完成ということを理由に発注者が支払いを拒むことができることになり、制作者にとっては酷な話になってしまいます。

 そこで次のような改正が行われました。

 

民法第634条
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一   注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二   請負が仕事の完成前に解除されたとき。

 

 このように制作者が行った業務の完了分のうち、実際に発注者が利用可能になった部分(可分)については、契約が解除されたとしても注文者に対して報酬を請求できるようになりました。

 こうした改正の趣旨を鑑み、業務請負契約書の報酬支払規定については、契約が解除となる場合でも業務の進行度合いに応じて対価の支払いをするように契約書の規定を定めるとよいでしょう。

準委任契約でも成果物の納品を前提とすることも可に【648条の2】

 請負契約には「仕事の完成義務」があり「完成した成果物」に対して報酬を支払うものであり、委任契約(準委任契約)には「仕事の完成義務」はなく「作業工数」に対して報酬を支払うものという区別がされてきました。

 この委任契約の報酬支払条件に「成果物の完成」を含めてもよいことになりました。

 

民法第648条の2
委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2   第634条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。

 

 この改正条文では「成果に対して報酬を支払うことを約した場合において」という条件付けを認めており、委任契約でも報酬支払の条件に「成果物の納品」を設けてもよいと解釈できます。(従来通り委任契約の報酬支払条件を「作業工数」にしてもよく、契約で自由に選択できるようになりました)。

 

 請負契約では開発業務の指揮命令権は制作者にあって成果物の納品義務があり、委任契約では指揮命令権は発注者にあって成果物の納品義務はないというのが原則になりますが、改正によって委任契約(準委任契約)を採用して指揮命令権を発注者に帰属させながら制作者に「成果物の納品」を義務化するという形も可能になります。

錯誤無効から取消制度への変更【95条2項】

 改正前の民法第95条では、意思表示が錯誤に基づくものであれば「無効とする」と定められていましたが、改正により「取り消すことができる」に修正されました。

 「無効」の場合には、当事者が何もしなくても当然に無効であり、意思表示の効果は最初から効果がないという扱いでした。
「取消」では、何もしなければ意思表示の効果は有効となりますが、当事者が取消の通知をすることによって無効とすることができるというものです。
改正によって、錯誤に基づく契約については、取消権者がそのまま有効とするか、取消の通知をして無効にするかを選択できるようになりました。

 

契約書の契約違反条項などで、「契約違反があった場合に契約を無効とする」という趣旨の文言を設けることが多いですが、民法改正に沿って「契約違反があった場合には違反した相手方に対して催告(通知)をして取消すことができる」と修正するとよいでしょう。

債務不履行と契約不適合責任(瑕疵担保責任の廃止)【540条~543条,562条~563条】

 改正前の民法第570条では、成果物に隠れた瑕疵(プログラムのバグ等)があった場合には、発注者は制作者に責任がない場合でも契約を解除(または損害賠償請求)できるとする瑕疵担保責任が定められていました。
 民法改正により、この瑕疵担保責任規定は削除され、瑕疵担保責任という用語は使用されなくなります。

 「隠れた瑕疵」という用語は条文から削除され、バグ等の問題は第562条・第563条において「契約の内容に適合しない」と表現されるようになり、改正前の瑕疵担保責任は改正によって契約不適合責任に修正されました。

 瑕疵担保責任では、プログラムのバグ等があった場合には発注者ができることは契約の解除か損害賠償請求でしたが、改正後の契約不適合責任では「補修・代替物との交換・不足品の充足」など履行の追完請求ができることになりました。(ただし、追完の方法は制作者が決定できるので、発注者が不良品の交換を希望しても制作者が補修対応を行うことも可能です)。
なお、契約不適合責任に基づく追完請求の権利行使が可能な期間は不適合を知ったときから1年以内になります。

 

 こうしたバグや不良品という問題について、発注者の追完請求に制作者が応じない場合は債務不履行になり発注者は契約解除(または損害賠償請求)が可能になります。
また、損害が軽微であって契約解除も難しい場合は発注者は代金減額請求(第563条)ができるようになりました。
改正前の債務不履行規定では、制作者の落ち度が無く不良の原因は不可抗力であったとの主張があれば契約解除はできなかったのですが、改正により無過失主義に変更となり制作者に落ち度がなくても商品に不良があれば契約解除ができるようになりました。ただし、不良の程度が軽微である場合は契約解除は出来ず代金減額請求等で対応することになります。
この債務不履行解除は相手方に催告(通知)をしてから解除をするのが原則となります。

 

 このような改正を踏まえ、契約書の品質保証に関する瑕疵担保条項は契約不適合責任に修正する必要があり、契約違反条項も「契約違反があれば当然に解除」という文言になっていれば「催告の上で解除」に修正しておくほうがよいでしょう。

危険負担の債権者主義の廃止【改正前534条の削除】

 危険負担とは、自然災害等の不可抗力によって納品前の商品が滅失してしまった場合に、その費用負担を債権者と債務者のどちら側が持つべきかという考え方です。
改正前の民法では第534条によって、こうしたケースでの危険負担は債権者(発注者)が負うものとされてきました(債権者主義)

民法改正によって、この第534条は削除されて危険負担の債権者主義は否定され、第536条により危険負担は債務者(制作者)が負うことが原則となります(債務者主義への転換)。

 ただし、売買契約においては、第567条1項にて納品後に当事者双方の責任ではない事由で滅失した場合は、買主(債権者)は履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないと定められました。(危険負担の移転時期は「契約成立時」から「引渡し(納品)時)」に移行)。

 これを踏まえて契約書の危険負担条項については危険負担は債務者(制作者)が負うように修正することが求められます。(売買契約については、危険負担は納品時に売主から買主に移転する)。

意思表示を到達主義に統一【改正前526条の削除】

 契約の成立時期については、民法改正により「申込」と「承諾」の一致した時点であり、法令で指定された場合を除いて書面は必要ではない(口頭契約も有効)ということが明文化(第522条)されました。

 

 インターネット取引など契約の相手方が遠隔地にいる場合では、申込者が申込の発信をしたときに効果を認めるか(発信主義)、相手が受信したときに効果を認めるか(到達主義)が問題となります。
改正前の民法では到達主義(第97条)を採用しつつ、承諾の意思表示については発信主義(改正前第526条)を採用していました。
民法改正により改正前第526条は削除され、意思表示については到達主義に統一されました。

 

 契約書の契約成立時点に関する記述で発信主義になっている場合には到達主義の文言に修正が必要です。

消滅時効の短期化【166条~167条】

 改正前の民法では、債権の消滅時効は原則として10年とされ、例外的に5年、3年、2年、1年の短期消滅時効制度がありました。商法では、商行為に基づく債権については消滅時効を5年と定めていました。

 民法改正にあわせて、商法の消滅時効規定は削除され、債権の消滅時効は権利の行使できるときから5年間に短期化されました(第166条1項1号)。
同時に短期消滅時効制度も廃止となりました。

 ただし、債権者が権利行使ができる時を知らない場合には、権利行使ができる時から10年間(第166条1項2号)とされているため、改正前と同じ期間となります。

 人の生命や身体に被害を被った場合には消滅時効期間は20年(第167条)とされ、これは改正前よりも長くなりました。

 

 契約書に損害賠償条項を設ける場合は、これらの消滅時効期間を考慮する必要があります。

法定利率の引き下げ【404条】

 取引において利息を設ける場合は、改正前は民事は年利5%、商事は年利6%が上限と定められていました。
 民法改正により、この法定利率は変動性となり、2020年4月1日より3年間は年利3%が上限となります(第404条)。
 これにあわせて商事利率は廃止となり、利息の基準は民法に統一されます。

 この変動利率は3年ごとに見直され、1%単位で変動しうるものとされています。

 

 契約書において、取引を通じて利息を設定する場合には、この法定上限金利を上回らないようにしなくてはなりません。

定型約款の規定新設【第548条】

定型約款の規定新設【第548条】

 インターネットサービスの提供等では「約款」という大量取引を前提としたルールが運用されていますが、民法でもこのルールを定型約款として規定することになりました。
その定型約款の定義(第548条)は以下のとおりです。

 

(1)ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
(2)内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、
(3)契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体

 

 定型約款が適法となるための要件(組入要件)は以下のとおりです。

(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
(2)(取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合

 

つまり、ウェブサービスでは定型約款をサイト上の見やすい位置に事前に掲示し、その内容に承諾をするボタンを用意するなど、約款の内容について利用者の承諾を求める操作を設けなくてはなりません。(紙媒体での承諾書を得るという方法でも可)。

また、以下の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能となります。

(1) 変更が相手方の一般の利益に適合する場合
      又は
(2)変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当

 

なお、定型約款の内容が相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容については無効となります。

定型約款の組込要件が重要となるため、約款による大量取引を想定される事業者の方は、約款内容の事前掲示と契約者の同意取得の手続を確実に行わなくてはなりません。

民法改正事項を契約書に反映させましょう

 以上のように民法(債権法)の改正は従来の法解釈を踏襲するものが基本とされつつも、影響の大きな修正もあります。
 取引に使用する契約書も見直しが必要なところも生じることが多いと思います。

 ここに解説した事項と契約書を照合し、民法改正後も通用する内容に仕上げていきましょう。
 なお、当サイトで販売する契約書雛形についても、順次に民法改正にあわせて修正をしております。

 

 

 

契約書雛形の価格は料金のページをご参照下さい

 

 

 

当行政書士事務所の契約書雛形の3つの安心

 

その1 逐条解説書が付いているので安心
契約書雛型には、条項ごとの解説文書を付属しているので、解説を参照しながら雛形の修正を行うことができます。

その2 14日間の無償相談期間が安心
契約書雛形と解説書を確認しても判断がつかない問題があった場合には、メールか電話での無償相談に応じます。
(但し、無償相談は契約書雛形の納品日から14日間限定です。)

その3 Webサービスに精通した行政書士だから安心
当サイト運営者の遠山桂はIT関連事業の経験が長く、サイト制作と運営も自前です。
各種Webサービスの契約書作成の経験も豊富で、Web制作技術と契約知識とWebマーケティング経験を活かして契約書を作成しています。




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