発注者が開発費用の一部を出資し、制作者がサイトのシステム開発と運営、サーバー保守などの継続的な代行を行い、発注者が営業を行ってサービス利用者から利用料を徴収し、その収益を契約で定めたレベニューシェア比率で分配する取引を想定した契約書雛形です。
以下にレベニューシェア方式のWEB制作・システム開発契約書雛形の概要を記載します。
(このレベニューシェア型WEB制作・システム開発契約書雛形は全37条、A4用紙9枚分の構成となっております。)
なお、製品版の契約書雛型には、全条文についての逐条解説書も付属しております。
本契約の目的
発注者(委託者)がASPサービスや会員制SNSサイトの開発と継続的運営を制作者(受託者)に委託し、サービス運営による収益をレベニューシェアで分け合うことを確認します。
業務分担の範囲
委託者と受託者の間で、業務を開発、運営、販売、顧客管理などの業務に分けて分担することを確認します。また、受託者に運営を委託する内容をシステム開発、運営、コンテンツの更新、利用者の登録・解除など、具体的な作業を例示して明確にします。
分担した業務ごとに、委託者と受託者が費用負担をすることも同時に確認します。
本システムの権利および業務決定権
委託者と受託者とは対等な権利で共同事業を行うことを確認します。ただし、システムの制作・運営に関わる最終決定権は委託者が有することで、業務全体を委託者が主導します。
費用負担
初期開発費用の負担割合を定め、その定めに従って委託者が受託者に対して支払いをすることを確認します。支払い時期と金額を確定して記載します。
継続的なシステムの保守費用については、月度ごとに定額を委託者が受託者に対して支払いをします。
収益の分配比率
本システムの運用や販売による利益を、あらかじめ定めた配分率で分け合うレベニューシェア方式を採用することを確認し、その分配比率を定めます。
収益の分配方法
委託者が本システムの利用者から利用料や販売代金を徴収し、その集金した収益から指定の分配率に基づいて、委託者から受託者に対して報酬を支払うことを想定しております。
また、毎月の報酬の締め日や支払日についても定めます。
協力義務
本システムの開発と運営についての協力義務を定めます。
相互に打ち合わせの機会を確保したり、必要な資料の提出を求められたら応じることを義務化します。
禁止行為
コンテンツの複製や目的外使用など、本システムの運営の支障となる行為について、例を挙げて禁止します。
契約期間
契約期間は1年間とし、以後はどちらかより解約の申し出が無い限り自動更新制としています。
共同事業という性質を考慮し、収益が安定するまでの経過観察期間を設ける趣旨で最初の12ヶ月間を契約保護期間として解約を認めない特約も盛り込んでいます。
中途解約
契約保護期間を経過した以後は、中途解約をすることができるようにしています。中途解約をするには、書面で解約の通知を行い、その通知日から30日後に契約は解除されます。
本システムのサービス開始時期
本システムのサービスを稼動させる予定日(サービス開始日)を定めておきます。その開始日を目標に日程を進行させるものとします。
本システムの開発
本システムの機能追加や改善については、委託者と受託者の双方で企画を行い、相互の合意の下で受託者がカスタマイズの作業を行うものとします。このカスタマイズや開発の費用は受託者が負担するのを前提としますが、特に大規模な予算が必要な案件については相互の協議で経費の負担割合を決めます。
本システムの検査
本システムの稼動や新機能の実装をした際には、受託者がその報告をした日から3営業日以内に委託者が完成検査をするものとしています。
情報共有
本業務を円滑に進めるために、技術面やマーケティング面で保有する情報を相互に共有する義務を定めます。互いに質問には誠実に応じることを定めます。
販売権
本システムの販売権は委託者が独占することを確認します。また、委託者には販売代理店に本システムの販売権を代理店に対して卸売りする権利も認めます。
仕様書作成
ホームページ制作などのシステム開発については、別紙の仕様書に記載することで柔軟な対応を図ります。
契約書の改定をするのは難しい場合が多いですが、仕様書の改定は比較的容易にできるため、詳細な内容については仕様書に記載して見直しをする形がよいでしょう。
仕様書の確定
仕様書に記載した各種条件については、仕様書の末尾に署名捺印欄を設けて確定をすることを確認します。
仕様書と契約書の記載内容に矛盾が生じた場合は、仕様書の記載内容を優先することを確認します。(仕様書で指定する条件の方が、より実際の取引を反映するため。また、仕様書の改定の方が最新となるケースが多いため。)
仕様変更
仕様書の確定以後に、ホームページ制作の仕様(条件)の変更を行う場合には、トラブルを要望するために書面で覚書を発行することを確認します。
覚書の解釈でトラブルが生じる場合には、基本に立ち返って仕様書もしくは契約書の効力が優先することも確認します。
こうした効力の優位性に変更を加えたい場合は、第19条(仕様書の確定)と第20条(仕様変更)の内容を修正してご活用下さい。
WEBサーバー
ホームページのデータを格納するWEBサーバーの仕様(ホスティング事業者情報や容量など)について定めます。
また、WEBサーバー上のデータが滅失した場合の責任については、サーバー運営事業者の定めるサーバー利用規約に基づくことを確認します。
アップロードおよびバックアップ作業
ホームページのコンテンツをアップロードするために、委託者は受託者に対してWEBサーバーへのアクセス権を認め、そのFTPパスワード等の情報を開示することの承諾を求めます。
また、サーバートラブルなどでWEBサーバーに保管したデータが滅失した場合などでは、受託者が保管した時点でのデータを復元すればよいものとし、最新版のバックアップ作業やその復元を保証するものではないことを確認します。
著作権等の知的財産権の帰属
開発・運営をするシステムの著作権は、本契約書の締結時点から委託者に帰属するものとします。これにより受託者は、委託者の許諾を得ることなく本システムやコンテンツの複製や二次利用をすることが禁じられます。
本システムに関して特許権等の知的財産権が生じる場合は、その権利の持分は本契約書で定める配分率で相互で所有するものとしています。
本システムの契約不適合責任と免責事項
プログラムのバグや明白なミスの修繕義務は、民法上では売買契約(第570条)も請負契約(第637条)も1年間とされています。契約書で修繕期間の定めがされていなければ、受託者は、通常は1年間の修繕義務を負います。
この修繕期間は強行規定ではないので、契約(特約)によって短縮することも可能です。
本雛形では、検収日から30日間を無償で修繕に応じる期間としています。取引実情にあわせて、この期間を修正しても構いません。
なお、継続的な保守運営契約を含む場合については、システムの不具合の修繕義務も永続するものと考えられるので、契約期間が継続している間は、受託者は委託者の求めに応じて追加費用を請求することなく修繕対応をするものとしています。
権利の質入及び譲渡
本システムの利用権や販売権などの諸権利を相手方の書面による承諾を得ずに質入したり譲渡する行為を禁止します。
競合サービスの取扱いの禁止
相手方の書面による同意を得ずに、本システムと同一のサービスや類似のサービスを運営する競合行為を禁止します。
機密保持
相互に書面で機密と指定した情報については守秘義務を設けています。
また、ホームページの運営を通じて知りえた顧客もしくは第三者の情報について適正に管理する義務も課します。
個人情報の管理
継続的業務等で生じる顧客等の個人情報について、適正に管理するための義務を定めます。
個人情報保護法で求められる管理義務を定めています。
これは委託者と受託者の双方に義務化していますが、どちらか一方に絞っても構いません。
本契約書雛形の概要については以上のとおりです。