経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
ソフトウェア等の情報財の知的財産権(著作権、特許権)を有するベンダー(ライセンサー)から第三者に知的財産権の譲渡がされた場合、もしくはベンダーが倒産した場合、ライセンスの許諾を受けていたユーザーは当該情報財の使用を継続することができるか?
<情報財に関する知的財産権が第三者に譲渡された場合>
知的財産権の譲渡人と譲受人の間で、情報財のライセンサーとしての地位を移転する契約がなされた場合は、ユーザー(ライセンシー)は通常は引き続き情報財の使用ができます。
なお、この場合、仮に年度ごとにライセンス料が支払われるようなときには、(1)「三者間で譲渡契約を締結する」、(2)「旧ライセンサーからユーザーに対して、ライセンス料債権を新ライセンサーに譲渡した旨を通知する」、(3)「ライセンス料債権の譲渡についてユーザーが新もしくは旧のライセンサーに承諾する」のいずれかの手続が必要となります。
知的財産権の譲渡人と譲受人の間で、知的財産権のみが譲渡される契約がなされた場合は、以下のとおりとなります。
(ア)著作権が譲渡された場合
著作権が及ぶ形で情報財を利用する場合には、譲受人の著作権を侵害することになるので、情報財の使用を継続することはできなくなります。
ただし、情報財を単に視聴するなど著作物に改変を加えない使用行為や私的複製(著作権法第30条1項)など、譲受人の著作権が及ばない形であればユーザーは情報財の使用が継続できます。
(イ)特許権が譲渡された場合
ユーザーは自己の通常実施権発生後の当該特許権や実用新案権の譲受人に対し、自己の通常実施権を対抗できるので(特許法第99条)、ユーザーは情報財の使用を継続できます。
ただし、譲渡人とユーザーの間の契約内容がそのまま譲受人に引き継がれるか否かは不明確なので、使用条件について紛争化するリスクはあります。
そこで、情報財のライセンス使用許諾の契約をするに際しては、ライセンサーが当該情報財の特許権を有している場合は、その特許権に担保設定をするか承継禁止特約を結ぶなどの検討が必要といえるでしょう。
<ベンダー(ライセンサー)が倒産した場合>
(ア)著作権の場合
管財人によってライセンス契約が解除される可能性があり、その場合はユーザーは情報財の使用ができなくなります。
しかし、一般的なパッケージ・ソフトウェアのように最初に対価を支払えば以降の使用対価を支払う必要の無いような情報財のライセンス契約については、通常は解除されることはない場合が多いようです。
(イ)特許権の場合
ユーザーは自己の通常実施権発生後の当該特許権や実用新案権の譲受人に対し、自己の通常実施権を対抗できるので(特許法第99条)、ユーザーは情報財の使用を継続できます。