経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
デジタル・コンテンツやプログラムに対するアクセスやコピー(インストール)のためのID・パスワード等をインターネット・オークションに出品することや、インターネット上の掲示板で開示することに対して、どのような制限があるか?
各種プログラムや動画など、デジタルコンテンツの実行や視聴について対価を支払ったユーザーに限定して公開するために、IDやパスワードを発行して利用に制限をかけるビジネスモデルが広く普及しています。
このIDやパスワードを第三者に販売したり、インターネット掲示板に開示する行為には、契約上の債務不履行、不正アクセス禁止法、著作権法、一般不法行為などの問題が生じる可能性が高くなります。
(1)契約上の債務不履行
コンテンツの利用規約等において、提供者とユーザーの間でIDやパスワードを第三者に提供しないことを確認する条項を設けている場合は、これに違反したユーザーは契約上の債務不履行責任(民法第415条)を負うことになります。
(2)不正アクセス禁止法
業務など正当な理由がある場合を除いて、ID・パスワードを発行されている利用権者以外にID・パスワードを提供する行為は、不正アクセスを助長する行為として禁止、処罰の対象となります。(不正アクセス禁止法第5条、第12条2号、第13条)。
ただし、同法の適用には、ID・パスワードが個別の利用権者ごとに発行されていることと、その利用権者以外には用いることができないものであること、という2つの要件を満たす必要があります。(同一のパスワードを不特定多数に発行しているケースでは、同法の適用は困難になります。)
(3)著作権法
正規に入手をしていないID・パスワードを入力してコンテンツをダウンロードする行為は著作権法の複製権を侵害する可能性があります。
また、ID・パスワードをインターネット掲示板などに開示する行為は、複製権侵害の幇助行為とされる可能性もあります。
(4)一般不法行為
著作権法などの法律に定められた厳密な意味での権利侵害があった場合に限らず、法的保護に値する利益が違法に侵害された場合であれば民法上の不法行為(民法第709条)が成立し損害賠償の対象となると考えられます。