経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
媒体型のパッケージ・ソフトウェアを販売店から購入する場合、代金支払い後に初めてライセンス契約内容を見ることが可能となることが多く、ライセンス契約内容に同意できない場合に返品・返金ができないかが問題となっている。その際、(1)シュリンクラップ契約又は(2)クリックオン契約のいずれかの方法によってライセンス契約の締結が求められることが多いが、果たしてどのような場合に返品・返金が可能か?
DVD-ROM等の媒体で提供されるパッケージ・ソフトウェアを販売店経由で流通させる場合には、(a)情報財の複製物の売買契約と解されるケースと(b)販売店がユーザーに対してライセンス契約を締結することができる地位及び媒体等の有体物を引き渡すことを内容とする契約(提供契約)のケースがあります。
前者の場合には、ライセンス契約は存在せず、ユーザーは著作権法の範囲内で該当ソフトウェアを自由に使用することができます。この場合の返品については民法の定めに従うことになります。(契約解除には債務不履行や不法行為などの理由が必要です。)
後者の場合には、ユーザーは販売店との間で提供契約を締結し、次に製品開発をしたベンダーとの間でソフトウェアの使用を許諾するライセンス契約を締結するという2つの契約を締結することになります。つまり、ユーザーは返品等についてもライセンス契約の規定に拘束されることになります。
この提供契約型のライセンス契約では、この契約への合意を得る手続として、シュリンクラップ契約とクリックオン契約の手法がよく用いられています。
(1)シュリンクラップ契約
ユーザーが媒体の封(フィルムラップやシール等)の開封の前にライセンス契約の内容を確認し、契約締結の意思をもって媒体の封を開封した時点で、ライセンス契約が成立するとされ、開封以後にはライセンス契約への不同意を根拠とした返品は認められません。
(2)クリックオン契約
ユーザーがソフトウェアのインストール時に「(ライセンス契約に)同意する」というボタンをクリックする以前に、画面上に表示されたライセンス契約の内容を認識し、契約締結の意思をもってクリックした時点でライセンス契約が成立したとされ、以後はライセンス契約への不同意を根拠とした返品は認められません。
ライセンス契約の内容が、シュリンクラップ契約の場合は開封前に、クリックオン契約の場合はインストール前に、わかりやすく表示されてユーザーが確認できるようになっている場合には、開封や同意ボタンをクリックした時点で契約成立となり、以後はユーザーはライセンス契約の規定の拘束を受けることになります。この契約成立後には返品や返金はできないものとされます。
しかし、ライセンス契約の内容が、開封前に確認できない場合(シュリンクラップ契約)や、同意ボタンのクリック後に初めてユーザーが契約内容を確認できるような場合(クリックオン契約)は、ユーザーはライセンス契約への同意をしていないと解され、事後的に契約内容の不同意を理由とした返品や返金の問題が生じる可能性があります。