経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
ライセンス契約の解除等により、ライセンス契約が終了した場合には、ユーザーは具体的にどのような義務を負うのか?
ソフトウェアのライセンス契約の終了時としては、(1)契約解除、(2)契約不成立、(3)契約期間の満了の3つのケースがあります。
それぞれのケースで、ユーザーが負う義務について考察します。
(1)ライセンス契約解除のユーザーの義務(原状回復)
ライセンス契約が解除となった場合には、ユーザーにはソフトウェアを使用する権利は認められなくなります。
しかし、ユーザーのコンピュータにソフトウェアがインストールされたままだと、ユーザーが不正使用をする可能性があります。
そこで、民法第545条の原状回復義務として、ユーザーはソフトウェアの記録媒体等を返還する義務が生じます。また、ベンダーはユーザーに対して、コンピュータから該当ソフトウェアを削除することを請求できるとされています。
(著作権法第47条の3第2項でも、プログラム複製物の所有者がその所有権を失ったときには該当複製物を保存してはならないとの定めがあり、民法の原状回復義務と同様となっています。)
(2)ライセンス契約不成立のユーザーの義務(不当利得返還義務)
ライセンス契約が不成立となった場合には、ユーザーは単にソフトウェアを使用しないだけでなく、ユーザーがコンピュータにソフトウェアをインストールしていれば、それは利得にあたるため、民法第703条の不当利得返還義務により、ベンダーはユーザーに対して該当ソフトウェアの削除を請求することができるとされています。
(3)ライセンス契約満了時のユーザーの義務(契約による定め)
ライセンスの契約期間が満了した場合は、契約の更新をしない限り、ユーザーにはソフトウェアを使用する権利が認められません。
ソフトウェアの使用許諾契約書(ライセンス契約書)で、契約終了後にインストールされたソフトウェアを削除することが定められていれば、ユーザーはその契約内容に拘束され、ソフトウェアの削除義務が生じます。
しかし、使用許諾契約書に契約終了後のソフトウェアの削除について何も記載されていない場合は、ユーザーはソフトウェアの使用はできませんが、ソフトウェアの削除義務は負いません。