経済産業省がECサイト運営のガイドラインとする「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の概要を以下に掲載します。
【論点】
ブログや口コミサイト、動画共有サイトなどのCGM(Consumer Generated Media)サービスにおいて、名誉毀損や著作権侵害など、他人の権利を侵害する疑いがある情報がアップロードされ、これにより権利侵害を受けたとする者からCGMサービスを提供する事業者に対して当該情報を削除する要請があった場合、これを放置または削除したCGMサービス提供事業者は権利侵害を受けたとする者または情報の発信者に対して損害賠償責任を負うか?
CGMサービス事業者のネットワークにアップロードされた情報が誰かの権利を侵害するものとの主張があった場合、CGMサービス事業者がこれを放置すれば、権利侵害をされた者に対する不法行為責任が生じる可能性があります。
また、CGMサービス事業者が削除した情報が、実は適法な情報であった場合には、情報発信者に対する契約上の責任や不法行為責任が生じる可能性もあります。
こうしたトラブルの裁判例では、(a)違法な情報の流通を知り得た場合には直ちに削除する義務があるとするものと、(b)権利侵害が明白であるなど例外的事情が無ければ削除義務を負わないと制限的に責任を認めるものと2つに分かれています。
前者は匿名掲示板において違法書き込みを助長していた事例などで採用され、通常の中立的事業者では後者の基準の採用がされる見込みが強いとされています。
プロバイダ責任法第3条1項によれば、以下の3つのいずれかの場合でなければ、情報を放置したことによる(CGMサービス事業者の)民事上の責任は負わないとされています。
(1)削除が技術的に可能であり、かつ情報の流通によって権利が侵害されていることを知っていた場合。
(2)削除が技術的に可能であり、かつ情報の流通を知っていることに加えて情報の流通による権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合。
(3)事業者が情報の発信者である場合。
※平成27年4月の準則改訂により、以下の2点を追記。
(1)児童ポルノ公然陳列罪の成立に関する裁判例(最決平成24 年7 月9 日)について、改訂前に記載されていた高裁裁判に対する上告の棄却決定等を追記。
児童ポルノ画像のURL の一部を片仮名等に改変したものをホームページ上で公表した行為が児童ポルノ公然陳列罪にあたるとされた事件(第1 審:大阪地裁平成21年1月16日判決(判例集未登載)、控訴審:大阪高等裁判所平成21年10月23日判決(判例タイムズ1383 号156 頁)、上告審:最高裁平成24 年7 月9 日決定(判例時報2166 号140 頁))
(2)口コミサイトへの情報掲載に関する裁判例(札幌地判平成26 年9 月4 日)について追記。
飲食店等の口コミ情報を掲載するためのサイトを開設すること自体につき、掲載される飲食店等が掲載に反対していたとしても、当該飲食店等の名称についての人格的利益の侵害等に該当せず適法と解釈した裁判例がある(平成26年9月4日札幌地裁判決・裁判所ウェブサイト掲載)。
以上の追加点から、児童ポルノ画像の公然陳列など不法行為について、それが公開されているURLを改変したものが掲示板等のCGMサービスに掲載された場合に、URLが改変されていたとしてもCGMサービス事業者には不法情報の削除義務が生じるものと解釈するべきでしょう。
また、口コミサイトへの掲載を拒否した飲食店の判例のように、飲食店が掲載に反対をしたとしても、単に店名を掲載しただけであれば人格的利益を侵害したことにならないという判断が示されています。
(ただし、名誉毀損や業務妨害につながる投稿があれば、それらの不法行為を放置することは許されません)。