WEB制作の請負契約を開始する際に着手金を受領したり、各種サービスの販売代理店契約を開始する際に保証金を受領するなど、契約締結時に手付などの前払い金を受け取ることは多いものです。取引が滞りなく進む場合には問題は起こりませんが、何らかの不具合が生じて契約を解除する場合には、その前払い金(手付金)の扱いで揉めることがあります。
民法では、このような手付金について以下のような定めをしています。
手付金とは(民法557条)
売買契約の締結時に支払われる金銭であり、売買代金の残余金が支払われるときに、売買代金の一部として充当されるものです。
契約の両当事者間でこの手付金の性質を決めなかった場合には、解約手付として扱われます。(民法557条1項)
1)証約手付
契約が成立したことを証する意味合いで授受される金銭。
2)違約手付
契約当事者の一方に債務不履行があった場合に、罰金として没収できる趣旨で授受する金銭。(債務不履行の損害賠償条項がある場合には、債務者は損害賠償金と違約手付の両方を負担することになります。)
3)解約手付
契約の相手方が契約の履行に着手するまでの間は解除権を留保し、解約手付を支払った側は手付けの放棄、解約手付を受け取った側はその手付金の倍額を支払えば、契約の解除ができるという趣旨で授受される金銭。
※手付金を放棄して解約する場合(解約手付)は、契約の履行をする側が着手するまでに解除する必要があります。契約を履行する側が着手をした以後には解約手付の放棄による解約はできません。(民法557条1項)
履行着手後に解約をする場合は、履行に要した費用の賠償をする必要があります。
その他に、手付金と類似の前払い金としては申込証拠金(予約金)や内金があります。
申込証拠金(予約金)
契約締結以前に授受される金銭で、商品の購入の意思確認を目的とする金銭。契約が成立したときに手付金の一部として充当され、契約が不成立のときは返還されるもの。
内金(中間金)
契約締結の際に、代金の一部として前渡しされる金銭。手付金支払いの後、残金の最終支払までの間に支払われるもの。内金として支払われた場合は、解約手付のように内金の放棄や倍返しでの契約解除はできない。
以上のように、前払い金(手付金)にもいろいろな種類があり、どれを選択するかで返金義務などが変わってきます。
契約書を作成する際には、対価の支払い時期や解約および返還の扱いについて、上記を参考に明確に定めておきたいものです。